もの忘れとは

もの忘れは、認知症を代表する症状のひとつです。
ただし、年齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れは性質が異なります。
健常な人の場合、出来事そのものは覚えていて「思い出せない」「うっかり忘れた」と感じることが多いのに対し、認知症では体験した事実そのものを思い出せないという特徴があります。
そのため、話した内容を尋ねても「聞いていない」「そんな話はしていない」と答えることがあります。
また、思い出せない部分を補うように「友達と話していて聞いていなかった」「出かけていて知らない」などと、事実とは異なる説明で取り繕うこともあります。
もの忘れ以外の症状
認知症では、もの忘れ以外にもさまざまな症状がみられます。
- 言葉がすぐに出てこない
- 服の着方が分からなくなる
- 話の内容を理解しにくくなる
- いつも行っている場所え道に迷う
また、特殊な認知症の症状として、
- 誰もいないのに人が見える
- 何も無いのに虫が這っていると訴える
などの幻視が現れることがあります。
怒りっぽくなったり、興奮しやすくなるなど、性格や行動の変化がみられることもあります。
認知症の現状
65歳以上の高齢者の10%が認知症であるという報告があります。
認知症の有病率は年齢とともに増加し、5歳年を重ねるごとに倍増するとも言われています。
日本では高齢化が急速に進んでおり、65歳以上の人口は約30%(2025年現在)に達しています。今後、認知症の患者さんはさらに増加すると予想されます。
認知症の種類と特徴
認知症にはいくつかのタイプがあり、それぞれ症状の現れ方や経過が異なります。
1.アルツハイマー型認知症
最も多いタイプの認知症です。
初期には、もの忘れなどの記憶障害がゆっくりと進行します。
その後、
- 言葉の理解が難しくなる
- 計画を立てることが出来なくなる
- 日常生活での判断が難しくなる
といった症状が加わり、進行に伴い行動・心理学的症状 (BPSD)と呼ばれる不安、興奮、妄想、抑うつなどが現れることがあります。
2.脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血など、脳血管の障害に伴って怒る認知症です。
- 動作が遅くなる
- 自発性が乏しくなる
- 計画や判断が鈍る
など、前頭葉機能の機能低下に関連する症状が目立ちます。
症状の現れ方はアルツハイマー型認知症とは異なり、症状が比較的急に現れることが多いのが特徴です。
夜間の興奮、せん妄、抑うつなどのBPSDを伴うことも多く、高血圧症、糖尿病、高脂血症、狭心症や心筋梗塞などの内科疾患を合併しやすい点も特徴です。
3.レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症
このほかにも、幻視やパーキンソン症状が目立つレビー小体型認知症、人格や行動の変化が早期から現れる前頭側頭型認知症などがあります。
治療について
アルツハイマー型認知症には、いくつかの抗認知症薬があり、主な目的は認知症の進行抑制です。
効果には個人差があり、病気の進行を完全に抑えることは難しいのが現状です。
抗アミロイドβ抗体薬
- レカネマブ(レケンビ)
- ドナネマブ(ケサンラ)
上記が、一部の医療機関で使用されます。
一方、脳血管性認知症に対する特効薬はありませんが、禁煙、肥満の改善、高血圧症や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の治療を行うことが、脳血管性認知症の治療につながると考えられています。
レビー小体型認知症の治療薬
- ドネペジル(アリセプト)
- パーキンソニズムに対してはゾニサミド
などが用いられることがあります。
認知症の予防について
認知症の発症や進行を防ぐためには、認知症の危険因子や防御因子を知ることが大切です。
アルツハイマー型認知症の危険因子
- 年齢
- 性別(女性に多い)
- 家族歴
- うつ病・うつ症状
- 頭部外傷
- 糖尿病
- 高血圧症
- 高脂血症
- 喫煙
- 肥満
※一部は脳血管性認知症の危険因子も共通しています。
アルツハイマー型認知症の予防因子
- 高い教育歴・言語能力や知能
- 高い職業歴
- 身体運動
- 知的なレジャー活動
- 社会的交流
- 昼寝の習慣
